先日、書店のホラーコーナーを訪れた際、ふと目に留まったのが『こわい話の時間です 部分地獄』と『こわい話の時間です 六年一組の学級日誌』の二冊。これらは、2025年6月11日に株式会社福音館書店から同時刊行される本格ホラーアンソロジーです。著名な作家たちが集結し、子どもたちの心に響く「こわい話」を届けるという企画に、思わず心が躍りました。
ホラーは、ただ恐怖を与えるだけのものではないと私は考えています。福音館書店のこの取り組みは、「怖い」という感情が子どもたちの成長にとって重要な要素であることを強調しています。井上雅彦氏が編者として関わり、様々なジャンルで活躍する18名の作家たちが書き下ろした本作は、まさにその理念を体現しています。恐怖を通じて子どもたちの好奇心や想像力を刺激し、心の成長を促す良質なホラー作品が求められる今、これらの作品は特に注目に値します。
それぞれの物語は、神社や学校、公園、路地など身近な舞台を背景に、さまざまな「こわい話」を展開します。特に「部分地獄」には、芦沢央氏や宮部みゆき氏など、名だたる作家による多彩な物語が収められています。その中で「ログインボーナス」や「きれいずかん」といった作品は、現代の子どもたちが抱える日常的な恐怖と向き合う試みとして、興味深いテーマを持っています。
一方、「六年一組の学級日誌」には、恩田陸氏や我孫子武丸氏らが参加。特に恩田氏の「六年一組の学級日誌」は、学校という子どもたちにとって身近な場所での怖い体験を描き出しています。学校という空間は、未知の恐怖と親しみが同居する特別な場所。子どもたちが共感できる要素が散りばめられており、読者を引き込む魅力があります。
このように、両作品は単なる恐怖の提供にとどまらず、子どもたちにとっての「怖さ」を通じて成長を促すきっかけを与えるものです。井上雅彦氏の言葉を借りれば、「未知のものへの恐れは、子どもにとって世界に覚える『感動』の一種なのかもしれません」。この視点が、作品に対する期待感を一層引き立てます。
私自身、ホラー作品に触れることで感じることができる様々な感情や思索の幅を広げることができると信じています。『こわい話の時間です』シリーズは、子どもたちだけでなく、大人にとっても心の成長の糧となる一冊となることでしょう。新たな恐怖を体験しながら、同時に心の中の好奇心を刺激される、そんな貴重な時間を提供してくれる作品群に期待が高まります。
この夏、ぜひ手に取ってみたい一冊です。